理論冷却時間とは?
今回は、射出成形における理論冷却時間について説明しようと思います。
理論冷却時間とは文字通り、成形工程における理論上最適な冷却時間であり、金型試作のT0や実績の少ない樹脂の成形において役に立つ概念です。もちろん「理論上」なので、実際には金型の冷却設計や添加剤の比率などで変わってくるのですが、情報が少ないトライを行う際にはこれを抑えておくと心強いかもしれません。
理論冷却時間の計算方法
計算方法として最もメジャーなのが、バルマン式と呼ばれる計算式かと思います。バルマン式においては、理論冷却時間を算出するにあたり、まずは樹脂材料の熱拡散率を求める必要があります。
熱拡散率αは、
α=λ/ρ・Cp
λ:樹脂材料の熱伝導率(Cal/cm・Sec・℃)
ρ:樹脂材料の密度(g/㎤)
Cp:樹脂材料の比熱(Cal/g・℃)
で求めることが出来ます。熱拡散率にかんしては、計算しなくとも材料メーカーや研究所などが物性表を公表している場合もありますので、探してみられると良いかもしれません。(分散型熱物性データベース | 産総研)
熱拡散率が分かったところで、いよいよ理論冷却時間を算出することが出来ます。
理論冷却時間Tc(秒)は
Tc=(H²/α・π²)In{4(t1-t2)/π(t3-t2)}
H:成形品の肉厚(cm)
t1:溶融樹脂温度(℃)
t2:金型温度(℃)
t3:成形品の離型温度{熱変形温度-(10~30)}(℃)
という計算で算出します。この計算式から見えてくることは、
・冷却時間は、肉厚の2乗に比例するということ
・熱が逃げにくい材料ほど、冷却時間は延びる
・金型との温度差が小さいほど冷却時間は延びる
という事実です。何より、肉厚が2倍になると理論冷却時間は4倍になることを考えると、とりわけ製品肉厚の設計がサイクル短縮のためには重要であるということが分かります。
ただ、上述にあるようにあくまで理論値なので、実際に成形時にはTc×0.5~1.7秒ほどの幅で調整することが多いです。計算式上、離型温度を低く設定すれば冷却時間が伸び、その代わりに寸法が安定します。逆説的に、高く設定するとサイクルは縮みますが変形リスクを取ることになります。この辺は理論だけではない、技能士の地力が試される部分です。
まとめ
冷却時間についてとにかく押さえておきたいことは、肉厚の二乗に効いてくるということです。これは理論値であることはもちろん、実際の成形現場でも傾向は同じです。製品の設計段階でも役に立つし、成形技能士にとっても心強い知識です。
そして、バルマン式はそれを簡単に算出できるメソッドです。特に製品設計、特殊な形状・材料のT0トライなどで条件づくりの決め手に欠ける際には、ぜひ活用してみてください。