PEEK（ポリエーテルエーテルケトン）とは
一昔前に比べて、「スーパーエンプラ」「PEEK」「ポリスルフォン」など、普段あまり目にしない樹脂の名前を聞くことが多くなった気がします。そこで、現在弊社が量産体制を整えるべく研究しているこの材料について、ご紹介します。
■ 概要
PEEK（Poly Ether Ether Ketone）は、スーパーエンジニアリングプラスチックに分類される高機能半結晶性熱可塑性樹脂です。芳香環を主骨格に持つ剛直な分子構造により、耐熱性・耐薬品性・機械的強度・寸法安定性など、あらゆる面で優れた性能を発揮します。
射出成形用樹脂としては融点が高く、約343 ℃に達するため、高温仕様の成形設備が必要となりますが、その分、成形品は高温環境でも安定した性能を維持します。
（出典：Victrex社 技術資料「Victrex PEEK 450G Technical Data Sheet」）
■ エンジニアリング特性
● 機械的・熱的特性
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連続使用温度：約250 ℃（短時間では300 ℃に耐える）
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ガラス転移温度（Tg）：約143 ℃
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引張強さ・曲げ強さ・耐クリープ性に優れる
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高温下でも剛性を維持し、金属代替材として機能
これらの特性は、ベンゼン環を含む分子骨格とエーテル・ケトン結合のバランスにより、分子運動が抑制されることに起因します。
（出典：Ensinger Plastics「PEEK Material Properties」, SpecialChem PEEK Guide）
● 耐薬品性・耐加水分解性
PEEKはほとんどの有機溶剤、酸、アルカリに対して極めて安定であり、高温蒸気にも劣化しにくい特性を持ちます。このため、化学装置や医療機器、半導体製造装置などでの採用が進んでいます。
（出典：Curbell Plastics「PEEK Material Overview」）
■ 成形と加工のポイント
PEEKは成形温度が高く、射出成形時の樹脂バレル温度は約400 ℃、金型温度は150 ℃以上を必要とします。
金型設計では以下の点に注意が必要です。
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冷却系統の最適化
結晶化制御には、急冷を避け、適切な温度保持が重要です。 -
材料乾燥と脱気設計
高温条件下での水分残留やガス発生を防止します。 -
金型材質と表面処理
耐熱・耐腐食性に優れた鋼材を選定し、表面は離型性・熱安定性を考慮したコーティングを推奨します。 -
強化グレードの考慮
ガラス繊維・カーボン繊維添加による剛性向上や摺動特性改善が可能です。
（出典：Emco Plastics「Processing Guide – PEEK」, Zeus Inc.「A New Focus on PEEK」）
■ 用途と採用事例
| 分野 | 主な用途 | 要求特性 |
|---|---|---|
| 機械・電気部品 | ギヤ、ベアリングケージ、コネクター | 高剛性・絶縁性・耐摩耗 |
| 自動車・航空機 | エンジン周辺部品、燃料系部材 | 高温耐性・軽量化 |
| 医療機器 | 手術器具、インプラント | 滅菌耐性・生体適合性 |
| 半導体製造装置 | 搬送治具、真空部品 | 耐薬品性・低アウトガス |
（出典：Victrex、Xometry Materials Resource）
■ まとめ
PEEKは、「軽量で金属並みの性能を持つ高分子材料」として、製造業の高付加価値化に寄与する素材です。
コストは高いものの、長期耐久性・軽量化・メンテナンス削減などの観点から、トータルコストでは有利になるケースも多く、今後の射出成形分野でも採用拡大が期待されます。
■ 主な参考文献・出典
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Victrex plc：Victrex PEEK 450G Technical Data Sheet
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Ensinger Plastics：PEEK Material Properties
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Zeus Inc.：A New Focus on PEEK
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Emco Plastics：Processing Guide – PEEK
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Curbell Plastics：PEEK Overview
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SpecialChem：PEEK Thermoplastic Guide
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Xometry：Material Science – PEEK
