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「キャビティ」/「コア」の由来、知っていますか?

金型の「キャビティ」と「コア」

射出成形の現場でよく耳にする「キャビティ」と「コア」という言葉。
日常的に使われている用語ですが、そもそもなぜこのように呼ばれているのか、その由来をご存じでしょうか。今回は、この2つの呼称がどのように生まれ、どんな意味を持っているのかを整理してみます。


■「キャビティ」──樹脂が流れ込む“空洞”の側

「キャビティ(Cavity)」という言葉は、英語で「空洞」や「くぼみ」を意味します。
射出成形金型では、“製品の外側の形状を作る凹み側”を指します。つまり、溶けた樹脂が流れ込んで形を作る“空間”そのものです。

この言葉が使われるようになったのは、射出成形技術がアメリカから日本に伝わった1950年代頃といわれています。海外ではすでに「Cavity mold」という言葉が一般的で、そこから「キャビティ」という呼称が日本でも定着していきました。
成形空間を意味する英語がそのまま技術用語として受け継がれた、というわけです。


■「コア」──製品の“芯”を形づくる側

一方の「コア(Core)」は、「中心」や「芯」を意味する英単語です。
金型では、“製品の内側形状を形成する凸部側”を指します。たとえばキャップや容器のような中空形状の製品では、コアが製品内部の空間を作る中心部となっています。

実はこの「コア」という呼び方は、鋳造分野から受け継がれたものです。
鋳造では、内部に空洞を作るために「砂の芯(サンドコア)」を使います。この“芯”の考え方が射出成形の世界にもそのまま取り入れられたのです。


■キャビティとコアは「対」で成り立つ

射出成形では、キャビティとコアがぴたりと組み合わさることで、初めて製品の形を作る空間が生まれます。
金型がしっかり密着し、樹脂が均一に流れることで、狙った寸法・外観が実現されるのです。

現場では「キャビ側」「コア側」という表現も使われます。
一般的に、外観面はキャビティ側、突き出し機構(エジェクタ)はコア側に配置されます。これは、製品をきれいに離型するための合理的な構造上の考え方です。


■用語の背景を知ることは、理解を深める第一歩

このように、「キャビティ」も「コア」も、単なる呼称ではなく、それぞれが金型構造と成形原理を表す重要な概念です。
語源や意味を理解しておくことで、設計図面や仕様書の読み取り精度が上がり、社内外での情報共有もスムーズになります。

身近な用語の背景を知ることは、日々の業務をより深く理解するきっかけになります。
改めて、金型づくりの言葉のひとつひとつに込められた意味を見直してみるのも、良い機会かもしれませんね。